2008年10月26日日曜日

顔面骨骨折

まず下眼瞼切開。眼瞼縁ぎりぎりで良い。外眼角部ではしわに沿って。眼瞼縁は11番を使う。引っかけるようにして切開。
少し眼輪筋をつけて瞼縁からflapを起こす。ほんの少しで良い。これはスキンフックを引っかけられるようにするためと、術後拘縮が起きないようにするため。
眼窩下縁を触診する。確認したら、形成尖刀で一気にそこまで一ヶ所を深く穿通させる。あまり途中で刃を開いたりしないで良い。この際、flapを引くフックは絶対に持ち上げるようには引かない。眼窩隔膜が持ち上がってしまい、破る原因となる。手前に引くようにする。感覚としては押し付けるように。
下縁に達したら、少しずつ左右に切開を広げる。順調に行っていれば隔膜上から眼輪筋を剥離するように出来る。骨膜を切開して剥離、骨折線を展開出来るようにする。剥離はあまり広げすぎる必要はない。特に内側は、プレートを固定できる必要最低限で良い(涙嚢を傷つけかねない)。外側は眼窩外壁を確認しなければならない。このため剥離を進めていくに当たって、眼輪筋を外側で切開する事になる。前頭頬骨縫合部の骨折線を確認(ドリリングできる範囲まで)出来るまで進めれば良い。
尚、剥離は顔面骨用のいちばん小さいエレバが有用。眼窩下神経に近いところなど注意が必要なときは普通のエレバラスパを使う。
口腔内切開は、内側はそれほど延長する必要はない。頬骨弓下に馬蹄鈎を入れるため、むしろ外側を延長気味にする。切開は粘膜切開を入れた後、骨に最短距離で達するような方向に向きを変える。あまり尾側でも歯根をやっつけるし、頭側だと眼窩下神経が危ない。上顎前面の骨片はフリーなものは除去する。プレートで橋渡しをするような形になっても構わない。骨膜は剥がしすぎない事。基本的にバットレスを再建するところを重点的に行う。
整復する際に、陥入している軟部組織は外しておく。骨片同士が噛みあってしまっているような場合は、例えば横方向に引っ張ってから前面に持ち上げる、といった2段階での操作が必要になる。骨折面の整合状態を見て整復状況を確認する事も大事だが、最も重要なのは頬骨前面の前後方向の高さ。これが戻っていないと整復した意味がない。もう一つの指標として、眼窩外側壁のの骨折面が復旧しているかどうかも重要である。
固定はまず、前頭頬骨縫合⇨眼窩下縁⇨上顎頬骨縫合部、となる。
前頭頬骨縫合部は0.4mmチタンワイヤーで行う。マイクロチョイス1.5のセットを使う。いちばん小さいドリルで良い。まず前頭骨からドリリングする。方向としてはドリルを寝かして刺入する。感覚としてはベッドと並行となる位の方向。マレアブルレトラクターで眼球を保護する事。同様に頬骨部にもドリリング。チタンワイヤーは2本に切っておく。その内1本はまっすぐ、もう一本は2つ折りにする。直のほうを前頭骨の穴から入れる。眼窩壁から先端が出てきたら、モスキートなどでつまんで引き出す。この際、一緒に押してやらないとなかなか出てこない。頬骨の穴から2つ折りにした方を入れる。2つ折りにした先端は十分潰しておかないと進まない。両方とも十分先端がでたら、2つ折りの先端をいったん開いて、直の方の先端を引っかける。両方の先端を十分に潰して、頬骨の穴から2つ折りワイヤーを引っ張り出す。この状態で前頭骨から入れていたワイヤーが両方の穴をくぐって居る事になる。ワイヤーを締結(必要以上に占めすぎると切れてしまう)して5ミリ程度の長さに切断、断端を骨折線に添わせるように曲げ、眼窩内に入れる。もちろん眼球に刺さらないように。
眼窩下縁はマイクロチョイス1.5のセットを使う。ゆるいまがりのプレートが有用。内側外側骨片とも2穴は固定する。第3骨片が合った場合でもすててはいけない。眼窩下縁の輪郭は重要である。ナイロン糸などででも固定する。スクリューはまず内側の骨折線に近いところから。完全に締めずに、自由度を持たせる。なお、固定する際に馬蹄鈎を入れておかないとどんどん骨片が後方に落ち込んでいってしまうので注意。次に外側骨片の骨折線側をしっかりスクリューし、順次固定をすすめる。すべて固定したら、最後に(最初に入れた)スクリューを締め直す。
上顎の固定は特に注意する事は少ない。使用するのはマイクロチョイスの2.0セット。
プレート固定で注意するのは、使用するプレートはいちばん端まできちんとスクリューを入れる事。また、プレートの端が跳ねたりしないよう、十分に曲げてやらなくてはならない。
縫合であるが、重要な点は、まず眼窩下縁の骨膜はしっかりとrepairすることである。これをやらないと軟部組織が術後尾側に下垂してしまう。一方、眼輪筋を再建するのは外側壁を確認するときに切開した外眼角部だけで良い、基本的に皮膚縫合だけで十分である。
術後は2-3日は生食ガーゼで眼瞼を冷やしたほうが良い。

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