2011年10月20日木曜日

尺骨神経管症候群

切開は豆状骨と有頭骨の間を通る弧状切開を基本。遠位は近位手掌線まで、必要に応じて手掌線に沿って撓側に延長。近位は豆状骨を過ぎて尺側手根屈筋まで。そこから長掌筋腱まで撓側に延長する。
まず近位の切開から尺側手根屈筋腱と長掌筋腱の間に尺骨神経動脈を見出す。案外深いところにある。又、脂肪塊が浅筋膜下から突出してきて見難いことがある。助手がいれば適宜避けさせる。
尺骨神経動脈にテープをかけて遠位に剥離を行う。尺骨動脈は蛇行していることがある。豆状骨に近づくと深部に潜りこむようになる。遠位の皮膚切開を十分にしておくこと。手掌の皮下組織は線維が多く、鋭的に剥離しないと展開できない。
尺骨神経動脈が掌側手根靭帯にて圧迫されているので、神経動脈を損傷しないように注意して切離していく。手根管ほどしっかりとはしていないが、それでもかなり強い横走する線維である。繰り返すが、十分遠位の皮下を展開しておくこと。
掌側手根靭帯を切離すると、その遠位に短掌筋線維がある。ここでも神経がentrapされることがあるので切離する。この短掌筋に向かう尺骨神経枝があるが、これは切離してもいいのか。短掌筋は皮筋なのであまりはっきりしないと思いがちだがそれなりに筋体は確認できる。
知覚障害だけであればここまでentrapを解除すれば十分なはずである。この遠位で尺骨神経深枝(筋枝)が尺側へ?分岐して、MT-arch(短小指屈筋腱腱弓)をくぐって深部に達する。よって運動障害もある場合はこちらも開放する必要がある?

ここまで切離すれば十分なはずであるが、手根管症候群を合併しているように疑われる(破格で中指まで知覚障害があるときなど)は、上記の近位手掌線に沿った切開を延長すれば、撓側の皮弁を展開することによって(長掌筋腱を撓側に牽引して手根管入り口を確認、手掌腱膜を切離して展開する)、手根管全長を確認できる。皮膚切開を延長しないでも一応手根管切離は可能であるが、不確実となる可能性はあるのであまり小切開にこだわらないほうがいい。