2008年10月28日火曜日

口蓋裂

挿管(下口唇正中固定)したら、体位をとる前に印象採取を行う。肩の下に手を入れて頚部後屈。あまり長い時間とらないように。
懸垂頭位。開口器をつけるが、舌圧子にて舌を圧迫(チューブごと)、切歯に固定具をあてて開口する。口角鈎も装着するが、いずれも長時間連続して使用しないように。特に口角鈎は褥瘡を作りやすいので注意。離皮架は先端が患者の乳頭あたり?になるようにセット。舌圧子をひきあげるようなセッティングになる。なお、帽子はかぶらせない。肩枕はサンステート(保温用の銀わた)程度で。
圧布は穴あきを使う。サイドに切れ込みをいれ、口角鈎を操作できるようにしておく。
デザインは皮膚ペンとモスキート+ピオクタニンで行う。皮膚ペンは軟口蓋くらいである。硬口蓋後端から前方に向かって、及び歯槽縁はモスキートでデザインする。これは前者が11番、後者が12番メスを使用する範囲に相当する。
まず口蓋垂から操作する。11番で切開しても良いが、まず口蓋垂を裂の面で粘膜を切除してしまう。この面に向かって軟口蓋前縁から11番で(先端を使うようにして)切開していくとやりやすい。硬口蓋裂縁は前方に向かって12番で切り上がってくる事になる。先端のコントロールがつけにくいので左示指を刃にあて、進み方をコントロールしてやる。
歯槽は立ち上がるあたりで切開する事になる。push backする際にかなり外側までback cutする事になるが、とりあえず硬口蓋があるあたりからの切開となる。前方に向かっては切開線が決めにくいが、flapとして起こす範囲は独特の皴があるので何となく分かる。
硬口蓋flapを起こす際、歯槽前端のあたりの切開から形成尖刀(眼科尖刀では危険)を入れて、小刻みに刃を動かすようにして粘膜弁を挙げる。一ヶ所きっかけを作ってそこを把持し、少しずつ広げていく。粘膜弁として挙上する範囲は前外側が中心である。あまり後外側は攻めなくても良い。適当な範囲に骨膜を残せたら、骨膜に切開を一ヶ所(11番などで)入れる。切れ目から耳かきエレバ(以下耳掻き)で骨膜下に剥離を進める。適宜眼科尖刀で骨膜切開を広げて行く。耳掻きで気持ち良く剥離が進むが、nv bundleが出てくる前方に骨の隆起がある事が多い。このあたりで慎重に鈍のエレバに持ち替える。bundleの前方側方を剥離するとその後方はすぐ硬口蓋後端である。bundleに付着する線維成分も眼科尖刀などで慎重に切除する。bundle後方の剥離は両側方から慎重に進めるが、だいたい完了したらホッケースティク状のエレバを通すと上手く行ったりする。なお、bundleは出来るだけ内側から剥離していく事。外側からだと損傷する危険あり。
翼突鈎は歯槽の後方にある。粘膜から触知可能。方向を確認したら、形成尖刀を半開きにしてそちらに進め、擦り挙げるようにして帆張筋を外す。硬口蓋後端から帆挙筋を外す。鼻腔粘膜を破らないように注意する。筋体の口蓋側、裂側に少し開いた形成尖刀を当てて少し切り、遠方に滑らして地道に外していく。硬口蓋後端全長にわたって外す。軟口蓋を摂子で手前に引くようにすると力が加減しやすい。奥に引っ張ると鼻腔粘膜が裂けやすくなる。軟口蓋の三枚おろしは粘膜の縫い代がとれる程度で良い。
硬口蓋鼻腔粘膜の剥離は実は裂縁から進める様である。ホッケースティックできっかけをつくり、いわゆるねじりぼうで鼻腔側を剥離する。それほど広範囲に剥離しなくても良い様だ。back cutは専用のはさみでなくても良い。硬口蓋後方で入れるが、ちょうどbundleのあたりの位置であり、切断しないように注意が必要である。
これらの操作によってflapの受動が出来る筈である。目安としては軟口蓋の筋体が数ミリ余裕を持って重なる位。決して十分な減張が出来ないまま縫合しようとしてはいけない。必ず瘻孔となる。
縫合はvomer flapと硬口蓋鼻腔粘膜から始める。両端4-0PDSを使う。まずどちらか(今回はvomer flapからとする)の粘膜側(手前)から1針入れる。次に同側の粘膜側からもう別の1針を入れる。これで片側の粘骨膜弁に2針かかった事になる。次に対側(この場合は硬口蓋鼻腔粘膜の奥の方にraw surfaceから1針入れる。次に同じ針を手前に鼻腔粘膜面から刺入する。これで水平マットレス縫合が出来た事になる。しっかり結ぶ事。これを硬口蓋全長に渡って行う。
次に軟口蓋鼻腔粘膜を縫合する。5-0PDS。まず口蓋垂粘膜に1針掛けて、半分に結ぶ。切らないでこの糸を操作して縫いやすいように軟口蓋を移動させる。順次奥の方から結節縫合。出来るだけ手前まで縫い上げる。まあ無理し過ぎる事はない。
次にmuscle sling再建。4-0PDS。口蓋水平面に対して水平に回すようにして縫合していく。大体3針位か?この縫合で粘膜面が十分寄るくらいにしてやる。なお、硬口蓋付着は最後に縫合するが、これはそんなにtightでなくてもよい。slingが再度硬口蓋に付着しないようにするためであるので。
最後に口蓋側粘膜を縫合する。奥の方から垂直マットレスを掛けていく。5-0PDS。大体合ったら途中は結節で。一次口蓋の三角弁に両側のflapを縫着する。三点縫合で良い。
これで縫合終了。仕上げにボルヒールを塗布。粘膜面には付かないように!剥がれる原因となる。示指でflapをおさえつつ、raw surfaceにのみ充填して、今度こそ終了。

2008年10月26日日曜日

関節拘縮病態・診断・治療法

関節拘縮診断

皮膚性拘縮  伸展により皮膚蒼白となる。
骨・軟骨性拘縮 レントゲン所見で狭小化など
筋・腱性拘縮 動的腱固定効果陽性 2ヶ月のリハビリで改善なければ腱剥離・筋伸展術
関節包性拘縮 動的腱固定効果陰性 2ヶ月のリハビリで改善なければ関節乖離術
深筋膜性拘縮 母指の内転拘縮 2ヶ月のリハビリで改善なければ筋膜切離

拘縮の原因と特徴
外傷性拘縮
1)浮腫に起因する拘縮
MP関節伸展拘縮:関節液の貯留、側副靱帯と関節包の浮腫により伸展拘縮を来す。および、手背部分での伸筋腱の緊張の増加によって症状を増強する。
PIP/DIP関節屈曲拘縮:MP関節伸展拘縮によって屈筋腱の緊張が増加、かつ伸筋腱の緊張が低下することによってPIP,DIP関節の屈曲をきたす。
慢性に経過すると、PIP関節の掌側板両側から中節骨中央にのびる靱帯が拘縮をきたし、症状を固定する。
母指内転拘縮
手関節屈曲拘縮

2)骨折に起因する筋短縮、腱癒着による拘縮
骨折に起因する血腫の器質化に伴い、伸筋腱の癒着を生じやすい。
この拘縮の特徴は、動的腱固定効果を呈することである。

手背部伸筋腱癒着によるMP,PIP関節伸展拘縮:中手骨骨折に伴い伸筋腱が手背で癒着してMP,PIP関節伸展拘縮を呈する。
骨間筋短縮による拘縮:中手骨間のコンパートメント症候群により骨間筋の癒着を生じる。骨間筋はMP関節掌側をとおり、lateral bandに移行するため、拘縮によりMP関節屈曲、PIP関節伸展を呈する(intrinsic plus拘縮)。

屈筋腱癒着によるMP/PIP関節屈曲拘縮:前腕部で屈筋腱が癒着している場合は指関節の屈曲拘縮を呈し、手関節をさらに屈曲すると指関節伸展が可能となる動的腱固定効果が認められる。
屈筋腱が手掌部で癒着するとMP/PIP関節の屈曲拘縮をきたし、MP関節をさらに屈曲するとPIP関節の伸展が可能となる動的腱固定効果が認められる。

内シャント設置術

以下左に作成することを前提とする。
手台の頭方に顕微鏡を設置。
橈骨結節の約4センチ近位に横切開をおく。切開はまず皮膚全層をとる。出血点はモスキートで把持して止血。眼科用クーパーで皮下組織を切開する。橈側皮神経に注意。浅筋膜を切開すると、橈側皮静脈を確認できる。しづらいと思われる際には、駆血帯をまくと確認しやすい。
静脈は一カ所、モスキートで外壁に当てるようにして裏面をだす。対側も同様にしてトンネルを作成する。ここに血管テープを通して把持する。助手に近位または遠位の皮下を筋鈎で引かせる。テープを把持して、静脈外壁にモスキートを当てて剥離を進める。適宜枝を処置する。ある程度剥離が進んだら、眼科用クーパーまたはマイクロ用尖刀で、外壁表面を鋭的に剥離する。この剥離部から、周囲組織をすくって、切離していく。これにより周囲組織の剥離が進む。近位・遠位ともある程度すすんだら一時剥離を中断する。
動脈も同様にして筋膜に達し、血管テープを通す。壁がしっかりしているので、テープが通せたらすぐに外壁と周囲組織を鋭的に剥離して良い。ただし、特に裏面に枝が出ているので確認して、5-0ナイロンで結紮すること。剥離は基本的にダブルクリップが通せるくらいの範囲でかまわない。
動脈・静脈間の皮下組織を切開する。皮神経のみ気をつければよい。
ここでマイクロを入れる。
まず静脈を剥離する。皮膚皮下組織に開瞼器をかけると見やすいこともある。基本的に助手に筋鈎を引かせるが。助手に対側の壁周囲組織を把持させてカウンターをかけ、マイクロ尖刀で剥離する。ただし、基本的に吻合部周囲のみ剥離すれば良い。
十分だと思われたら、動脈の剥離に移る。これも吻合予定部周辺を鋭的に外膜露出させ(一カ所切開、そこから剥離)るだけで十分である。静脈側の壁を中心に。
この時点で、静脈近位を3-vのクリップで駆血する。出来るだけ遠位を引き出し、モスキートで把持、直のマイクロ尖刀で切断する。遠位断端は4-0シルクで結紮。吻合断端を助手に一方を把持させ、術者が対側を把持。クリップを一時外し、拡張子を通す。拡張子を通す際、およそ先端が皮膚切開部を通るくらいまでは血管壁を把持しておかないと(テンションをかけておかないと)通らない。以降は静脈の走行にそって拡張子を進めていく。
拡張が終わった時点で、開瞼器をかけ、白い穴あき圧巾をかける。圧巾は生食でしめらせる。動脈にダブルクリップをかける。
静脈断端は結局切除するので、ある程度把持してもかまわない。ここにテンションをかけて(助手にも持たせる)、鋭的に外膜のみを露出させていく。
静脈を動脈壁に移動させ、あまりたるまないで吻合が出来る事を確認したら、静脈断端を切離する。枝やクリップの位置を参照に、ねじれないように注意する。
動脈壁を切開する。約4㎜、ノギスで測定する。11番メスで外壁、内壁を貫通するようにする。貫通すると出血が有るはずである。すくうようにして、全層切開とする。静脈側の壁を曲がりマイクロ尖刀で全層に切開を広げる。断端が垂直になるように注意する。
血管吻合に移る。右側から8−0プロリンで結んでいく。やや静脈側からかけていくと良い。糸は切らないで、次に左側を同様に縫合する。これはやや長めに糸を切ってもらう。手前側の静脈壁にプロリンをかける。これは動脈にはかけないで、糸も切らずに剥離子で把持して、カウンターをかけて後壁を露出させる。切らないでおいた右側のプロリンで後壁を連続縫合していく。最初の一針は、前の刺入部より手前側、外側から入れるような感じで動脈を刺す。動脈全層をすくっていることを確認する。次に、できるだけ手前の静脈壁から刺入する。きちんと全層さす。動脈壁も全層ひろうようにする。ここが漏れやすい。以降、連続縫合を進める。左端では静脈内壁から外壁に出し、左端の縫合していた糸と結ぶ。
中央の把持していたプロリンを動脈壁を通し、縫合する。以降は単結節で縫合していく。
静脈、動脈のクリップを外す。漏れがないことをかくにんしてから動脈のクリップを抜去する。
静脈のkinikigしている点を外壁周囲で剥離、また、皮下組織も剥離して、真皮皮膚縫合とする。強い圧迫包交は行わない。

顔面骨骨折

まず下眼瞼切開。眼瞼縁ぎりぎりで良い。外眼角部ではしわに沿って。眼瞼縁は11番を使う。引っかけるようにして切開。
少し眼輪筋をつけて瞼縁からflapを起こす。ほんの少しで良い。これはスキンフックを引っかけられるようにするためと、術後拘縮が起きないようにするため。
眼窩下縁を触診する。確認したら、形成尖刀で一気にそこまで一ヶ所を深く穿通させる。あまり途中で刃を開いたりしないで良い。この際、flapを引くフックは絶対に持ち上げるようには引かない。眼窩隔膜が持ち上がってしまい、破る原因となる。手前に引くようにする。感覚としては押し付けるように。
下縁に達したら、少しずつ左右に切開を広げる。順調に行っていれば隔膜上から眼輪筋を剥離するように出来る。骨膜を切開して剥離、骨折線を展開出来るようにする。剥離はあまり広げすぎる必要はない。特に内側は、プレートを固定できる必要最低限で良い(涙嚢を傷つけかねない)。外側は眼窩外壁を確認しなければならない。このため剥離を進めていくに当たって、眼輪筋を外側で切開する事になる。前頭頬骨縫合部の骨折線を確認(ドリリングできる範囲まで)出来るまで進めれば良い。
尚、剥離は顔面骨用のいちばん小さいエレバが有用。眼窩下神経に近いところなど注意が必要なときは普通のエレバラスパを使う。
口腔内切開は、内側はそれほど延長する必要はない。頬骨弓下に馬蹄鈎を入れるため、むしろ外側を延長気味にする。切開は粘膜切開を入れた後、骨に最短距離で達するような方向に向きを変える。あまり尾側でも歯根をやっつけるし、頭側だと眼窩下神経が危ない。上顎前面の骨片はフリーなものは除去する。プレートで橋渡しをするような形になっても構わない。骨膜は剥がしすぎない事。基本的にバットレスを再建するところを重点的に行う。
整復する際に、陥入している軟部組織は外しておく。骨片同士が噛みあってしまっているような場合は、例えば横方向に引っ張ってから前面に持ち上げる、といった2段階での操作が必要になる。骨折面の整合状態を見て整復状況を確認する事も大事だが、最も重要なのは頬骨前面の前後方向の高さ。これが戻っていないと整復した意味がない。もう一つの指標として、眼窩外側壁のの骨折面が復旧しているかどうかも重要である。
固定はまず、前頭頬骨縫合⇨眼窩下縁⇨上顎頬骨縫合部、となる。
前頭頬骨縫合部は0.4mmチタンワイヤーで行う。マイクロチョイス1.5のセットを使う。いちばん小さいドリルで良い。まず前頭骨からドリリングする。方向としてはドリルを寝かして刺入する。感覚としてはベッドと並行となる位の方向。マレアブルレトラクターで眼球を保護する事。同様に頬骨部にもドリリング。チタンワイヤーは2本に切っておく。その内1本はまっすぐ、もう一本は2つ折りにする。直のほうを前頭骨の穴から入れる。眼窩壁から先端が出てきたら、モスキートなどでつまんで引き出す。この際、一緒に押してやらないとなかなか出てこない。頬骨の穴から2つ折りにした方を入れる。2つ折りにした先端は十分潰しておかないと進まない。両方とも十分先端がでたら、2つ折りの先端をいったん開いて、直の方の先端を引っかける。両方の先端を十分に潰して、頬骨の穴から2つ折りワイヤーを引っ張り出す。この状態で前頭骨から入れていたワイヤーが両方の穴をくぐって居る事になる。ワイヤーを締結(必要以上に占めすぎると切れてしまう)して5ミリ程度の長さに切断、断端を骨折線に添わせるように曲げ、眼窩内に入れる。もちろん眼球に刺さらないように。
眼窩下縁はマイクロチョイス1.5のセットを使う。ゆるいまがりのプレートが有用。内側外側骨片とも2穴は固定する。第3骨片が合った場合でもすててはいけない。眼窩下縁の輪郭は重要である。ナイロン糸などででも固定する。スクリューはまず内側の骨折線に近いところから。完全に締めずに、自由度を持たせる。なお、固定する際に馬蹄鈎を入れておかないとどんどん骨片が後方に落ち込んでいってしまうので注意。次に外側骨片の骨折線側をしっかりスクリューし、順次固定をすすめる。すべて固定したら、最後に(最初に入れた)スクリューを締め直す。
上顎の固定は特に注意する事は少ない。使用するのはマイクロチョイスの2.0セット。
プレート固定で注意するのは、使用するプレートはいちばん端まできちんとスクリューを入れる事。また、プレートの端が跳ねたりしないよう、十分に曲げてやらなくてはならない。
縫合であるが、重要な点は、まず眼窩下縁の骨膜はしっかりとrepairすることである。これをやらないと軟部組織が術後尾側に下垂してしまう。一方、眼輪筋を再建するのは外側壁を確認するときに切開した外眼角部だけで良い、基本的に皮膚縫合だけで十分である。
術後は2-3日は生食ガーゼで眼瞼を冷やしたほうが良い。