2010年9月14日火曜日

広頸筋皮弁

まず腫瘍を切除する。
顔面神経断端はできるだけマーキングしておく。
皮島に全周で切開を入れる。遠位は皮膚のみ。
トンネル部に切開を入れる。皮膚のみ(真皮をつけられれば、含めて)。
トンネル部の皮弁を挙上する。厚くても含皮下血管網レベルで。
この時点で広頚筋表面は露出される。
皮島近位(皮弁遠位)を、鎖骨骨膜上で挙上する。骨膜をつけても良いだろう。
鎖骨を乗り越えるあたりで、いったん剥離を止める。
皮弁前方で、胸鎖乳突筋前縁を確認する。筋膜下に入る。おそらく、少し剥離を進めると、外頚静脈が筋膜上に確認できる。鎖骨上からすすめた剥離と交差するあたりで、静脈が鎖骨下に入る。鎖骨骨膜を切開(骨膜をつけて挙上していた場合)して、外頚静脈を表側から確認、剥離する。出来るだけ近位で結紮(2-0絹糸)し、皮弁側は静脈クリップでクリッピング、切断する。
鎖骨付着部付近で胸鎖乳突筋筋膜を切開、しばらく筋膜下で剥離する。胸鎖乳突筋前縁・後縁では当然筋膜を切開、広頚筋下で剥離するが、筋弁にはできるだけ胸鎖乳突筋筋膜を含める。
皮島上縁付近に至ったら、覚悟を決めて広頚筋筋体に切開をいれて、筋弁を挙上していく。前方では前頚静脈に注意。後方では、当然外頚静脈に注意。また、胸鎖乳突筋中央付近で頚横神経が筋体を横切るが、これは切断することになる(できるだけながく皮弁につけるか)。
頭側では、できるだけ下顎縁まで剥離をおこなう。当然。顔面動静脈が広頚筋下に見えることになる。下顎縁近くで、顔面動脈から頤下動脈?が分離するようなので、これは筋弁につける。前方では筋体と下顎骨を切離することになるか。
これで皮弁が挙上出来たことになる。後方に回転させて移植。
もしかすると、外頚静脈と、浅側頭静脈の吻合、頚横神経と顔面神経頬骨枝の吻合を行うかもしれない(時間があれば)。

2010年9月7日火曜日

下顎骨関節突起骨折

Dr.Iよりの私信を転載

下顎関節突起骨折は開口時の偏位さえ気にしなければ、手術は不要です。僕は手術はいっさいしていません。特に観血的整復固定は合併症も多く、整復は手技的に困難で行う適応はほぼないと考えています。延長器を用いた非観血的な方法はよいですが、通常の顎間固定で十分と思います。また、下顎関節突起骨折は内側転移するのが当たり前です。
意識がある人であれば急性期の歯科受診は不要です。なぜなら咬合があっているかどうかは、患者が判断できるからです。患者のいつもの咬合位のことを習慣性咬合といいます。その「習慣性咬合位」を回復することこそが治療の目的です。
内側転位した骨頭はもとどうりには戻りませんが、ある程度整復されそこでリモデリングして関節を形成します。
治療のコツは、早期のゴムによる顎間固定(数日以内)と顎運動の早期開始です。顎間固定は偏位した下顎を修正する方向に左右に四角くゴムをかけます(上下2フックずつかけ四角に、これを左右で)。強さは患者がうにうにとあごを動かせる(口を軽く開けれる)程度にゴムを緩くかけます。患者には口を軽く開け閉めさせるように指導しかみ合わせの運動をさせます。その運動によって顎位が誘導されます。ゴムは毎日変えます。また、かける位置も顎位の回復と共に変更してゆきます。このかける位置はtry and errです。毎日かみ合わせを見て良くなる方向、強さを探してください。1-2週間ほどで習慣性咬合位が獲得できたらゴムを強めにかけて、全粥キザミ程度の食事を開始します。食事の時はゴムを外し、食後歯磨き後に新しいゴムをかけます。これが患者自身ができれば退院して外来加療とします(ゴムをかけた状態のデジカメ写真を患者に渡して同じようにかけるように指導します)。この状態を4週間ほど続けて、咬合が安定したらアーチバーを外します。硬いものを食べることを2週間禁じ、問題なければ常食に戻します。この時点で患者がかみ合わせの異常を訴えなければ歯科受診は不要です。訴えた場合は歯科受診となります。開口時のあごの偏位はあらかじめ患者に言っておく必要はあるでしょう。
ゴムがすぐに手に入らないときは駆血帯を輪切りにしてください。(業者に言えば持ってきてくれるでしょう。各種ありますがmideumがあれば十分です、フックへの掛け方を上下1点ずつの直線にしたり、上2フック下1フックやその逆にかけ三角にしたりすることで強さは変えられます)